(←戻る) NASAのArtemis IIミッション ![]() 写真NASA提供 宇宙船 Orion(オリオン) 日本時間2026/04/02 午前7時35分 Artemis IIロケットが打ち上がり 日本時間2026/04/11 午前9時7分地球に帰還 ![]() 写真NASA提供 ![]() 写真NASA提供 4人のクルーたちと ライズくん(右下) ![]() 写真NASA提供 MOON MASCOT MEET "RISE" ARTEMIS II'S ZERO- GRAVITY INDICATOR 無重力インジケーター ![]() BOARDING PASS:ARTEMIS II 私の搭乗券です(名前ボカシ入) 登録された5,647,889人の名前は SDカードに記録され オリオン船内の 無重力インジケーター(ぬいぐるみ) の中に大切に保管されて 月を周回しました。 私もそのうちの一人です。 ![]() update20260415 名前が刻まれたメモリは、 4人の宇宙飛行士 リード・ワイズマン ビクター・グローバー クリスティーナ・コック ジェレミー・ハンセン と共に 人類として50年以上ぶりに 月の向こう側まで到達しました オリオン宇宙船で 私達の搭乗券の名前が入った メモリを持って行ってくれた 「ライズ」君の近況が届きました。 以下、その便りです。 ***** 「無重力インジケーター (ゼロGインジケーター)」とは 宇宙船が地球の重力を離れて 無重力状態(微小重力状態) に達したことを 視覚的に確認するための小さな ぬいぐるみやマスコットのことです。 アルテミス2号(現在のミッション): 「ライズ(Rise)」 という名前のぬいぐるみが 採用されています。 この中に名前の入ったメモリがあります 有人月周回探査計画「アルテミス2」で 月の裏側の飛行に成功した 宇宙船「オリオン」には 飛行士4人とともに マスコットのぬいぐるみが乗っている。 名前は「ライズ」。 船内で浮き上がって無重力状態 に入ったことを教えてくれるなど 「もう一人の飛行士」 として一役買っている。 軽くて柔らかいぬいぐるみは 宇宙船の打ち上げ時 シートベルトを締めた飛行士に 無重力状態に入ったこと を知らせる道具として 従来用いられてきた。 アルテミス2では、 米航空宇宙局(NASA) がぬいぐるみのデザインを公募。 50か国以上から2600件 を超える応募があり 米カリフォルニア州の 小学生の案が採用された。 月が地球の柄の帽子をかぶったデザインで 1968年のアポロ8号で撮影された 月の地平線から現れる 「地球の出」をイメージしている。 NASAが事前に登録を募集した 564万7889人の名前を保存した 記録媒体のSDカードも ライズのポケットに封入されている。 約10日間の旅で緊張を強いられている 飛行士のリラックスのためにも利用され 船内の中継動画では飛行士が時折 ライズを触る様子も映し出されている。 ***** 以下はアポロ計画から始まった 技術的な話です Google AI を利用して作成した内容です。 AIによる解説であり 稀に事実誤認が含まれる可能性があります タップで目的の記事にジャンプ *01 固体ロケットブースター *02 アポロ誘導コンピュータ *03 誘導コンピュータ操作盤 *04 AGC「3つの安全策」 *05 AGC「フライト・プラン」 *06 AGC「計算尺」 *07 宇宙用六分儀 *08 着陸の最後の数分間 *09 慣性航法装置 *10 慣性航法装置対策 *11 自由帰還軌道 *12 通信は統合Sバンド *13 アポロ13号の事故 *14 通信バックアップ体制 *15 最新の宇宙服 *16 月面でWi-FiやLTE *17 月の標準時 *18 月面版GPS *19 月面での遭難 *20 宇宙での医療 *21 光ファイバージャイロ *22 月面の砂「レゴリス」 *23 ブラックアウト中の姿勢 *24 帰還後のRiseくん *01 * * アルテミス計画(SLSロケット)の 固体ロケットブースターを 燃料が少し残っているように見える タイミングで切り離すのには 主に「安全」と「効率」の 2つの理由があります。 左右のバランスを保つため 固体燃料は一度火がつくと 途中で止めることができず 燃え尽きる直前は推力が 不安定になります。 もし片方の燃焼が数秒早く弱まると 機体が激しく傾いて 空中分解する恐れがあります。 そのため 両方の推力がまだ 十分かつ安定しているうちに 同時に切り離すよう設計されています。 確実な分離のため 切り離す瞬間にブースターが まだ噴射していれば その推力を使って本体から素早く 確実に離れることができます。 燃料を完全に使い切って 「ただの重り」になってから切り離そうとすると 本体にぶつかるリスクが高まります。 「重さ」というコスト ロケットにとって 空になった巨大なケースを 持ち運び続けるのは大きな負担です。 わずかな残燃料が生む推力よりも 重いケースを早く捨てて 本体のエンジンだけで加速する方が 最終的な軌道投入には効率的なのです。 「もったいない」という感覚は正しいですが 宇宙開発では 「最後まで使い切るメリット」よりも 「安全に捨てるメリット」が優先されています *02 * * アポロ計画で使われていたのは アポロ誘導コンピュータ (AGC: Apollo Guidance Computer) と呼ばれるものです。 現代のスマートフォンと比較すると 処理速度は数万分の1 メモリ容量は数百万分の1という 今では考えられないほど 低スペックな機械でした。 しかし、 当時の最新技術を詰め込んだ 「世界初の集積回路(IC)搭載コンピュータ」 の一つであり 月着陸という極めて複雑な計算を やり遂げた歴史的傑作です。 主な特徴は以下の通りです。 驚異の「手編み」メモリ プログラムを保存するROMは 磁気コアに一本一本ワイヤーを 通したり外したりして 「0」と「1」を記録する 「コアロープメモリ」という 特殊な仕組みでした。 熟練の職人(主に女性たち)が 数ヶ月かけて手作業で編み上げていたため 「リトル・オールド・レディ (小さなおばあちゃん)メモリ」 とも呼ばれていました。 直感的な操作インターフェース(DSKY) 飛行士は「DSKY(ディスキー)」と呼ばれる テンキーと表示パネルを使い 「動詞(Verb)」と「名詞(Noun)」 のコードを入力して操作しました。 例えば、 「40番(動詞:開始)」 「33番(名詞:点火)」 と打つことでエンジンを制御する といった具合です。 高度なリアルタイムOS メモリが極端に少なかったため 計算の優先順位を判断して 処理を後回しにする 「優先順位スケジューリング」 という現代のOSにも通じる 高度な機能を備えていました。 アポロ11号の着陸直前に アラームが鳴り響いた際も この機能が重要な計算を優先したおかげで コンピュータがパンクせずに 無事着陸できました。 スペックの比較: 動作周波数: 約2MHz (現代のスマホは約2,500MHz以上) メモリ(RAM): 約4KB (現代のスマホは4GB〜など) 保存容量(ROM): 約72KB (現代のスマホは64GB〜など) このように非常に限られた性能でしたが MIT器械工学研究所が開発したAGCは 当時の技術の限界に挑んだ 「魔法の箱」だったと言えます。 *03 * * アポロ誘導コンピュータ(AGC)の 操作盤「DSKY(ディスキー)」 で使われていた 代表的な「Verb(動詞)」と「名詞(Noun)」 の組み合わせをいくつか紹介します。 宇宙飛行士は、 まるでプログラミング言語を話すように テンキーを叩いていました。 1. 基本的な操作 V16 N65(経過時間の表示) Verb 16(モニター表示) + Noun 65(ミッション経過時間) 今、打ち上げから 何時間何分経ったかを確認する 最も基本的なコマンドの一つです。 V21 N01(データの書き換え) Verb 21(データを入力) + Noun 01(特定のアドレス) コンピュータ内の数値を 手動で修正する際に使われました。 2. エンジン点火・操縦 V37 NXX(プログラムの切り替え) Verb 37(メジャーモード変更) 例えば「V37 N11」と打てば 「打ち上げモード」 「V37 N63」なら「着陸モード」へと ロケットの状態に合わせて コンピュータの役割を切り替えました V40 N33(点火カウントダウンの開始) Verb 40(ゼロにする/開始) + Noun 33(点火時刻) セットした時刻に合わせて エンジンの自動点火シーケンス を起動します。 3. トラブル・確認 V05 N09(エラー表示) Verb 05(表示) + Noun 09(アラームコード) アポロ11号の着陸時に有名な 「1202アラーム」が出た際も この表示機能が状況を知らせました。 V06 N20(姿勢の確認) Verb 06(十進法で表示) + Noun 20(ジンバル角) 船体が今、 宇宙でどの方向を向いているかを 角度で確認します。 宇宙飛行士はこのコードを 数百個も暗記しており、 チェックリストを見ながらリズムよく [Verb] [数字] [Noun] [数字] [Enter] と入力していました。 この「言葉で命令する」という 直感的なインターフェースが 極限状態でのミスを防いだ と言われています。 *04 * * アポロ誘導コンピュータ(AGC)で もし宇宙飛行士が 間違ったコードを打ってしまったり コンピュータがパニックに 陥ったりした時のために、 驚くほど賢い「3つの安全策」 が用意されていました。 1. 「やり直し」ができるクリアボタン 入力中に 「あ、間違えた!」と気づいたときは DSKYパネルにある [CLR] (Clear) ボタンや [RSET] (Reset) ボタンを押せば 入力途中の数値を消去できました。 現代のパソコンの「BackSpace」や 「Esc」キーと同じ役割です。 2. コンピュータからの「聞き返し」 重要な命令(エンジンの点火など) を入力すると 画面に数値が点滅(フラッシング)して 表示されます。 これはコンピュータが 「本当にこの数値でいいの?」 と確認を求めているサインです。 ここで [PRO] (Proceed: 続行) ボタンを押さない限り 勝手にエンジンが火を吹くことは ありませんでした。 3. 伝説の「再起動(リブート)」機能 アポロ11号の月着陸直前 有名な「1202アラーム」 が発生したときの話です。 レーダーから大量のデータが送り込まれ コンピュータの処理能力が 限界(オーバーロード)を超えてしまいました この時 AGCは「重要度の低い仕事を バッサリ切り捨てて 0.数秒で自分を再起動する」という 離れ業をやってのけました。 「今は着陸計算が最優先! レーダーの計算なんか知らん!」 とコンピュータ自らが判断し 再起動しても 「どこまで計算していたか」 を記憶していたため 着陸ミッションを中断せずに 続行できたのです。 このように、当時のエンジニアたちは 「人間は間違えるもの」 「機械は壊れるもの」という前提で 徹底的に「リカバリー(復旧)」の仕組み を作り込んでいました。 *05 * * 当時の宇宙飛行士が腕に巻いたり 船内に貼り付けたりしていた 「フライト・プラン(チェックリスト)」は まさに命綱でした。 その中身は 単なる手順書を超えた 「超巨大なカンニングペーパー」です。 1. 「動詞と名詞」の早見表 先ほどお話しした Verb(動詞) と Noun(名詞) のコードは すべてを暗記しているわけでは ありませんでした。 操縦席の目の前や システムパネルの目立つ場所に よく使うコードの一覧表がプレートとして リベット留めされていました。 2. びっしりと書かれた「数字の羅列」 チェックリストには 特定の時刻 (GET: Ground Elapsed Time) にどのボタンを押すか どの数値を入力するかが 秒単位で記されていました。 「22:15:00 V37 N11 Enter」 (打ち上げから22時間15分に プログラム11を実行せよ) といった具合です。 これを一文字ずつ指で追いながら 入力していました。 3. トラブルシューティングの 「フローチャート」 もし警告灯(アラーム)がついた場合 次に何を確認すべきかが「Yes/No」の 枝分かれで書かれていました。 「もし1202アラームが出たら V05 N09を確認せよ。 もし数値が〇〇なら そのまま着陸を続行せよ」 アポロ11号の着陸時、 管制官が即座に「GO!」と言えたのも 手元にこの「もしも」の時のマニュアルが 完璧に準備されていたからです。 4. ユーモアと手書きのメモ 実は、この真面目なチェックリストには 地上スタッフがこっそり入れた 「漫画」や「ジョーク」が 紛れ込んでいることもありました。 極限状態の飛行士を リラックスさせるためです。 また、 飛行士自身が宇宙で気づいたことを 鉛筆で書き込んだメモが 今でも貴重な資料として残っています。 この「紙のマニュアル」と 「手編みのコンピュータ」 の組み合わせが 人類を月に送った最強の システムだったわけです。 *06 * * アポロの宇宙飛行士たちが ハイテクなコンピュータ(AGC)の バックアップとして あるいは計算のダブルチェックのために 肌身離さず持っていたのが 「計算尺(けいさんじゃく)」という アナログな道具です。 今の若い世代には馴染みが 薄いかもしれませんが 電卓が普及する前の 「エンジニアの象徴」でした。 1. 電池のいらない「究極のバックアップ」 計算尺は 目盛りが刻まれた板を スライドさせるだけで 掛け算、割り算、ルート(平方根) 三角関数などの 複雑な計算ができる道具です。 最大の利点:電池がいらない、 壊れにくい、 宇宙放射線でバグらない。 アポロ11号のエピソード: バズ・オルドリン飛行士は、 月着陸船の中でも計算尺を使って 軌道の計算数値をチェックしていた と言われています。 2. 「オーダー(桁数)」は人間が考える 計算尺の面白いところは、 答えの「数字の並び」は出してくれますが 「小数点がどこに来るか (1.25なのか125.0なのか)」は 人間の頭で 判断しなければならない点です。 おかげで、 宇宙飛行士たちは 「だいたいこれくらいの数値になるはずだ」 という直感を常に研ぎ澄ませていました。 3. 宇宙仕様の特別な「時計」 計算尺以外にも 彼らの腕には有名な 「オメガ・スピードマスター」 という機械式時計がありました。 実はこの時計のベゼル(外枠)には 「タキメーター」という目盛りがついており、 これを使えば 「特定の距離を移動するのにかかった時間」 から「時速」を瞬時に 割り出すことができました。 これも立派なアナログ計算機の一つです。 最新のコンピュータを使いこなしつつ 最後は自分の腕に巻いた時計や 手元の計算尺という 「物理的な道具」を信じる。 このハイテクとローテクの 絶妙なバランスが アポロ計画の面白さです。 *07 * * 宇宙飛行士が月へ行く途中で もしコンピュータが完全に壊れたり 地上との通信が途切れたりしても 自分の位置を割り出せるように 用意されていたのが 「宇宙用六分儀(ろくぶんぎ)」 という道具です。 大航海時代の船乗りが 星を見て現在地を知ったように アポロの飛行士も 「星」を頼りにしていました。 1. 宇宙船の窓についていた「望遠鏡」 司令船(コロンビアなど)の壁には 宇宙空間を覗くための小さな望遠鏡と 六分儀が組み込まれていました。 飛行士はこれを使って、 特定の37個の明るい恒星の中から 2つの星を選び その角度を精密に測りました。 2. コンピュータに「今ここだよ」と教える 測った星の角度を コンピュータ(AGC)に入力すると、 コンピュータは 「なるほど、 あの星があの角度に見えるなら 自分たちは今このあたりにいるな」 と自分の位置情報を修正 (キャリブレーション) することができました。 いわば 「人間が目で見測ったデータを使って GPSのない宇宙で現在地を更新する」 という作業です。 3. アポロ13号を救った「地球」の縁 爆発事故で電力を失い コンピュータも止まってしまった アポロ13号では このナビゲーションが 文字通り命綱になりました。 窓から見える地球の 「明暗の境目(ターミネーター)」 を六分儀で捉え、 それを基準に手動でエンジンを噴射して 地球へ帰る正しい角度を保ったのです。 4. 究極のアナログ「スター・チャート」 もし37個の星の名前を 忘れても大丈夫なように 飛行士の手元には 「星図(スター・チャート)」 が用意されていました。 これには、どの時期に どの方向にどの星が見えるかが びっしり描かれており 暗闇の宇宙で迷子にならないための 「地図」として機能していました。 どんなにコンピュータが進化しても 最後は「自分の目で星を見て 角度を測る」という 数千年前から続く航海術が、 月旅行を支えていたというのは ロマンがありますよね。 *08 * * 月面着陸の最後の数分間は、 コンピュータの計算と人間の直感による 「究極の共同作業」でした。 1. 「P63」から「P66」への切り替え 月面へ向かって降下する際 コンピュータは 「P63(制動降下)」というプログラムで 自動的に高度を下げていきます。 しかし、高度約150メートルまで来ると 船長は手動操縦に切り替える 「P66(手動着陸)」 というモードを選択しました。 2. 窓に刻まれた「LPD(着陸点指示器)」 月着陸船の窓ガラスには、 縦と横のメモリが 直接プリントされていました。 コンピュータが 「今のままだと、窓の目盛り(LPD)の 『35度』の場所に降りるよ」 と数値を読み上げ 船長はその目盛りの先を覗き込みます。 「おい、あそこは岩場だ! クレーターがある!」 「よし、少し横に移動しよう」 このように コンピュータが見積もった着陸予定地を 人間が目で確認し 危険があればジョイスティックで 修正していたのです。 3. アポロ11号「燃料残り20秒」の緊迫 アポロ11号の ニール・アームストロング船長が 窓の外を見たとき コンピュータが選んだ着陸地点は 「巨大な岩がゴロゴロしている場所」 でした。 彼は即座に手動操縦に切り替え、 岩場を飛び越えるために 着陸船を水平に移動させました。 このため燃料を予想以上に消費し 着陸したときには 残り燃料で飛べる時間は わずか20秒ほどだった と言われています。 4. 砂煙との戦い 月面に近づくと エンジンの噴射で月の砂(レゴリス) が猛烈に舞い上がり 窓の外が真っ白で見えなくなります。 最後は窓の外が見えなくなるため もう一人の飛行士(バズ・オルドリン) が読み上げる 「高度と下降速度の数値」だけを頼りに 船長は目隠し状態で 着陸船を接地させました。 最新のコンピュータを信じつつも 最後の最後は「自分の目で見て 自分の手で操縦する」。 これがアポロ計画を成功させた 最大の鍵でした。 *09 * * 慣性航法装置 (IMU: Inertial Measurement Unit)は アポロの航法システムの 「心臓部」として 完璧に機能していました。 むしろ、コンピュータ(AGC)が 計算を行うための「生データ」 を提供していたのが このIMUです。 1. 宇宙の「不動の基準点」を作る IMUの内部には、 3つのジンバル(回転枠)で支えられた プラットフォームがあり その上に精密なジャイロスコープ が載っていました。 宇宙船がどんなに回転しても、 中のプラットフォームだけは 「最初に向きを合わせた星の方向」 をピタッと指し続け 宇宙における絶対的な基準 を作り出していました。 3. 加速度を測って「距離」を割り出す IMUには加速度計も 組み込まれていました。 エンジンを噴射した際の加速を検知 それをコンピュータが 時間で積分して「速度」を計算 さらに積分して「移動距離」を算出 これにより 窓の外が真っ暗で何も見えなくても コンピュータは 「今、時速◯kmで、 出発点から◯km地点にいる」 ということを把握できていたのです。 3. 弱点は「ジンバルロック」 当時のIMUには 唯一にして最大の弱点がありました。 宇宙船が特定の角度 (ジンバルが重なる角度)に傾くと 中のプラットフォームが振り切れてしまい 姿勢制御ができなくなる 「ジンバルロック」という現象です。 アポロ13号の事故時 船体が激しく揺れた際には 「ジンバルロックに気をつけろ!」 という緊迫したやり取りが 記録されています。 冒頭でお話しした「星を見る六分儀」は 実はこのIMUが少しずつズレるのを 修正するために使われていました。 「星(絶対的な目印)」でIMUを校正し そのIMUのデータで 「コンピュータ」が計算する…… という見事な連携プレーだったわけです *10 * * 超精密な慣性航法装置(IMU)を 過酷な宇宙環境で 狂わせないために行われていた 「2つの徹底した対策」が 非常にユニークです。 1. 究極の「温度管理」 IMUの中にある ジャイロスコープや加速度計は 温度がわずかに変わるだけで 金属が膨張・収縮し 誤差が生じてしまいます。 これを防ぐため IMU全体を「加熱ヒーター」 で包み込み 常に一定の温度(約54度) に保たれていました。 宇宙船の電源が入っている間 このヒーターは一度も切られることなく 精密機械を「ぬくぬく」とした 安定した状態 に置き続けていたのです。 2. 「流体(フルイド)」による摩擦ゼロ化 ジャイロスコープの回転部分は 機械的なベアリング(軸受)ではなく 「特殊な液体」の中に 浮かんでいました。 摩擦を極限まで減らす: 液体に浮かせることで 回転の抵抗をゼロに近づけ 数ヶ月におよぶミッション中も 精度を維持しました。 衝撃から守る: 打ち上げ時の激しい振動から 繊細なセンサーが壊れないように 「クッション」の役割も果たしていました 3. 「星」による定期的なリセット どんなに温度を保っても 物理的な機械である以上、 どうしても「ドリフト(わずかなズレ)」 が蓄積します。 そこで登場するのが、 先ほどお話しした「六分儀」です。 宇宙飛行士が六分儀で 「本物の星」を見る。 その正確な角度をコンピュータに入力 コンピュータが 「あ、IMUが0.01度ズレてるな」 と判断して数値を補正する。 この「物理的な機械(IMU)」 +「数学的な計算(AGC)」 +「人間の目(星の観測)」 という3段構えのバックアップ があったからこそ 何十万キロも離れた月まで ズレることなく到達できたのです。 アポロの技術を知れば知るほど 当時のエンジニアたちが 「いかに不完全な機械を 知恵と運用で完璧に近づけたか」 が見えてきて面白いですよね。 *11 * * 月までの旅路で使われた 最も賢い計算の工夫が、 自由帰還軌道 (フリー・リターン・トラジェクトリ) という航法です。 一言で言うと 「もしエンジンが故障しても 何もしなくても地球に勝手に 帰ってこられるコース」のことです。 1. 「8の字」の魔法 地球から月へ向かうとき ロケットをただ月へ向けるのではなく 月の進行方向の「ちょっと前(右側)」 をかすめるように打ち出します。 すると、月の重力が 「ブレーキ」と「カーブ」 の役割を果たし 宇宙船をぐるっと Uターンさせてくれます。 これがちょうど「8の字」を 描くような軌道になり 燃料を噴射しなくても地球の重力圏に 戻ってくることができるのです。 2. アポロ13号を救った「計算」 この軌道が真価を発揮したのが アポロ13号です。 爆発事故で月着陸を諦めた際 彼らはすでにこの「8の字」コース に乗る直前でした。 月をぐるっと回るだけで 最小限の燃料噴射 (軌道を微調整するだけ) で地球へ帰るパスに入ることが できたのです。 もしこの航法を使っていなければ 彼らは宇宙の彼方へ 飛んでいってしまったかもしれません。 3. 「月の重力」を計算機として使う 当時の非力なコンピュータにとって 複雑な軌道計算を リアルタイムで続けるのは重荷でした しかし、 この自由帰還軌道を使えば 基本的には「天体の重力(物理法則)」 が勝手に運んでくれるため コンピュータは 「今、予定のコースから どれくらいズレているか」 を監視するだけで済みました。 4. 最後の関門「再突入の角度」 地球に帰る際 コンピュータが最も精密に 計算しなければならなかったのが 大気圏への「進入角度」です。 角度が浅すぎると 石投げの石が水面で跳ねるように 宇宙空間へ弾き飛ばされてしまいます 角度が深すぎると 摩擦熱で宇宙船が 燃え尽きてしまいます。 この「わずか数度」の狭い入り口 (エントリ・コリドー)を狙うために IMUのデータとAGCの計算が 最後までフル稼働しました。 デジタル技術が未熟だったからこそ 「宇宙の物理法則(重力) を味方につける」という 究極に無駄のないルート設計が 行われていたわけです。 *12 * * アポロ計画における地球との通信は 「統合Sバンド(Unified S-Band)」 という画期的なシステムが 支えていました。 それまでは音声 データ、テレビ映像などを 別々の周波数で送っていましたが これを1つの電波(Sバンド) にまとめて送ることで 限られた電力とアンテナで効率よく やり取りできるようにしたのです。 1. 巨大な「耳」で受け止める(MSFN) 月は地球から約38万kmも離れているため 宇宙船からの電波は地球に届く頃には 極めて弱くなっています。 これを受け止めるため 地球側には 「MSFN(有人宇宙飛行ネットワーク)」 と呼ばれる直径26m〜64m級の 巨大パラボラアンテナが世界3カ所 (アメリカ、オーストラリア、スペイン) に配置されました。 地球が自転しても、常にどこかの アンテナが月を向いている仕組みです。 2. 「通信の遅延」という物理の壁 電波の速さは光と同じ (秒速30万km)ですが 月と地球を往復するには 約2.6秒の時間が かかります。 地球から「ハロー」と言う。 1.3秒後に宇宙飛行士に届く。 飛行士がすぐに「ハロー」と返す。 さらに1.3秒後に地球に届く。 このタイムラグがあるため 管制官と飛行士の会話には 独特の間(ま)がありました。 3. あの有名な「プッ」という音 (クィップ・トーン) アポロの交信記録を聞くと 言葉の終わりに「プッ」という 高い電子音が聞こえます。 これは「クィップ・トーン」と呼ばれ 遠い宇宙からの通信が途切れないよう 地上の送信機を自動で 切り替えるための信号音でした。 これが今では「宇宙通信の象徴的な音」 として記憶されています。 4. 映像を送るための「涙ぐましい工夫」 月面からのテレビ中継は 当時の人々に衝撃を与えましたが 実は帯域が足りず 普通のテレビ放送の画質では 送れませんでした。 そのため、 わざと「コマ数を減らした (低走査テレビ)」で送り 地上でそれを通常のテレビ信号 に変換して放送していました。 アポロ11号の映像が 少しカクカクして影が濃かったのは この「節約術」のためです。 最新のアルテミス計画では この電波通信に加えて、 「レーザー通信」による 高速大容量データ伝送 も計画されています。 *13 * * アポロ13号の事故時、 通信を維持し続けるのは 絶望的な挑戦でした。 爆発によって電力が枯渇しかけ 宇宙船が激しく揺れ動く中で 彼らがどうやって地球との「絆」を つなぎ止めたのか その裏側には極限の節約術と 職人技がありました。 1. 「電力の極限カット」と優先順位 爆発後 司令船の電力を 使い果たすわけにはいかないため ほとんどの機器を シャットダウンしました。 通信機も例外ではなく、 「最も電力を食わない最小構成」 に切り替えられました。 音声のみに絞る: テレメトリ(機体データ) の送信を最小限にし 映像送信などは論外としてカット。 送信出力を下げる: 地上の巨大アンテナの感度を信じて 宇宙船側からの電波出力を ギリギリまで絞りました。 2. 「手動」でアンテナを向け続ける 通常、 宇宙船のアンテナはコンピュータが 自動で地球を追尾しますが 電力を節約するために 自動追尾を止めました。 さらに、事故の影響で 船体がグラグラと不安定に回転 (タンブリング)していたため 地球を狙うのが極めて困難でした。 飛行士たちは 手動のジョイスティックで 船体の向きを微調整し続け 地球がアンテナの指向性 (電波が飛ぶ範囲) から外れないように 必死に維持したのです。 3. 着陸船のアンテナを「中継器」にする 司令船の電力を完全に切った後は まだバッテリーが残っていた 「月着陸船(アクエリアス)」 の通信システムを命綱にしました。 しかし、 着陸船のアンテナは 司令船ほど強力ではありません。 そこで地上の管制センターは、 オーストラリアにある世界最大級の パークス天文台の 巨大電波望遠鏡(直径64m) を急遽アポロ13号専用に割り当て 消え入りそうな微弱な電波を 必死に拾い上げました。 4. 「沈黙の4分間」再突入のドラマ 地球への再突入時 宇宙船の周りが摩擦熱でプラズマ化し 電波が遮断される「ブラックアウト」 が発生します。 アポロ13号は機体が損傷し 角度も不安定だったため 予定の3分を超えても 通信が戻りませんでした。 世界中が絶望しかけた4分7秒後 雑音の中から 「OK、ジョー(管制官の名前)」 という飛行士の声が聞こえた瞬間 管制室は歓喜に包まれました。 このように アポロ13号の通信は「最新技術」ではなく 「地上の巨大な耳(アンテナ)」と 「飛行士の執念」 によって維持されたのです。 *14 * * 現代のアルテミス計画 (オリオン宇宙船)では、 アポロ時代の教訓を活かしつつ 「デジタル技術」と「ネットワークの冗長化」 によって、通信トラブルへの備えが 劇的に進化しています。 主に4つの強力な バックアップ体制があります。 1. 「月の裏側」でも途切れないリレー衛星 アポロ時代 月の裏側に回ると 地球との通信は完全に途絶え 約45分間の「沈黙の恐怖」がありました。 アルテミス計画では 月の軌道を回る中継ステーション 「ゲートウェイ」や 専用のリレー衛星を配置します。 これにより 月の裏側にいても 地球と常時接続が可能になり、 死角をなくしています。 2. 「レーザー通信」による超高速バックアップ 従来の電波(Sバンドなど)に加え 光を使った「レーザー通信(光通信)」 を導入しています。 大容量: 電波の数万倍の データを送れるため トラブル時に機体の詳細な診断データを 一瞬で地球へ送れます。 干渉に強い: 電波が混み合っている状況や ノイズの影響を受けにくく 非常にクリアな通信ルートとして 機能します。 3. 「ディープスペースネットワーク (DSN)」の強化 地球側で電波を受け止める 巨大アンテナ群 (アメリカ、スペイン、オーストラリア)も アポロ時代より遥かに 高感度になっています。 たとえ宇宙船のアンテナが故障して 出力が極端に弱まっても 地上の「巨大な耳」がノイズの中から 微弱な信号を拾い出す能力は 当時の比ではありません。 また、複数のアンテナを連携させて 感度を高める「アレイ化」技術 も進化しています。 4. 宇宙船自体の「自律航法(AI)」 アポロ13号のように通信が 完全に途絶えたとしても 現代のコンピュータは 自ら星の位置をカメラで認識し 地上からの指示を待たずに 「自動で地球へ帰還するルート」 を計算・実行する能力を持っています。 「通信が切れたら終わり」ではなく 「通信がなくても帰ってこられる」 ようにソフトウェアが設計されているのが 現代の強みです。 アポロ時代が「糸電話」を 必死につないでいたとすれば アルテミス計画は「強固なメッシュWi-Fi」を 宇宙に構築しているような イメージですね。 *15 * * 最新の宇宙服 (アルテミス計画で採用される 「AxEMU」など)は もはや単なる服ではなく 「着る宇宙船」と呼べるほど 高度な通信・情報処理機能が 詰め込まれています。 アポロ時代の宇宙服と比べると 次のような驚きの進化を遂げています。 1. ヘルメット内の 「HUD(ヘッドアップディスプレイ)」 アポロの飛行士は 腕に巻いた紙のチェックリスト を見ていましたが 最新の宇宙服はヘルメットのバイザー に情報を直接投影できます。 自分の酸素残量やバッテリーの状態 月面での現在地を示すマップ 地上から送られてくる作業手順の指示 これらが視界に浮かび上がるため 両手を自由に使いながら 作業に集中できます。 2. 「高画質カメラ」によるリアルタイム中継 ヘルメットにはHD画質の 小型カメラが内蔵されています。 一人称視点: 飛行士が見ているものを そのまま地上の管制官や ゲートウェイ(月軌道ステーション) で見ることができます。 遠隔サポート: 難しい修理作業が必要なとき 地上の専門家が同じ映像を見ながら 「その右にある青いレバーを引いて」 とリアルタイムで指示を出せます。 3. 「Wi-Fi」と「LTE」の導入 驚くべきことに、 月面でWi-Fiや4G/5G(LTE)のような ネットワーク技術が使われる予定です。 これまでは親機(月着陸船)から 離れると通信が弱くなりましたが 月面に通信ネットワーク を構築することで 広範囲を自由に移動しても 安定した通信が可能になります。 飛行士同士が直接 高音質で会話できるだけでなく データのやり取りもスムーズです。 4. 音声認識とAIアシスタント 手袋が分厚いため 細かいスイッチ操作は困難です。 そのため 最新の宇宙服は音声操作 に重点を置いています。 「酸素の残量を教えて」 「ライトを点けて」 と話しかけるだけで操作が 可能になります。 マイクも進化しており 呼吸音や周囲のノイズをカットして 声だけをクリアに拾う技術 が使われています。 アポロ時代の宇宙服が 「頑丈なゴム風船と無線機」 だったとすれば、 最新の宇宙服は 「スマホとVRゴーグルを内蔵した パワードスーツ」 のような進化を遂げているわけです *16 * * 月面でWi-FiやLTE(携帯電話回線) を使えるようにする計画は 現在「ルナ・ネットワーク(LunaNet)」 という構想で具体的に進んでいます。 家の中のルーターのような仕組みを どうやって月面に広げようとしているのか その仕組みを3つのステップで 解説します。 1. 地球から「基地局」を運ぶ まず 月着陸船や 無人ローバー(探査車)自体が 「動くWi-Fiスポット(基地局)」 の役割を果たします。 ノキア(Nokia)などの 通信メーカーがNASAと協力し 月面の過酷な環境 (放射線や極端な温度変化) に耐えられる超小型・低電力の 「LTE/4G基地局」を開発しています。 これを月着陸船に載せて月に送り 着陸した場所を中心に 数キロメートルの通信エリアを作ります 2. 「メッシュネットワーク」 でエリアを広げる 月面はデコボコしていて 電波が遮られやすいため 1カ所だけでは不十分です。 小さな中継器(リピーター)を積んだ 無人ローバーを点々と配置します。 これらが互いに電波を バケツリレーのように受け渡す 「メッシュネットワーク」を構築します。 これにより 宇宙飛行士が着陸船から見えない クレーターの影に隠れても 通信が途切れないようにします。 3. 「ゲートウェイ」と「地球」をつなぐ 月面のWi-Fiネットワークで集めた データ(宇宙服のバイザーに 映す映像やバイタルデータ)は 以下のルートで地球へ届きます。 宇宙服(Wi-Fi/LTE) → 月着陸船 月着陸船(強力な電波) → 月の軌道を回るステーション 「ゲートウェイ」 ゲートウェイ(レーザー通信など) → 地球 なぜ「Wi-FiやLTE」を使うのか? これまでは専用の無線機 を使っていましたが Wi-FiやLTEといった 「地球で使い古された技術」を 流用するのには大きな メリットがあります。 低コスト: ゼロから開発する必要がなく 既存のチップを宇宙仕様に 改良するだけで済みます。 相互運用性: 異なる国や企業が作った ローバーやカメラでも、 同じ規格(Wi-Fiなど)を使えば 月面ですぐに接続して データを共有できます。 将来は 月面を走るバギー(月面車)から 「ライブ配信」をしたり タブレットで地球の家族と ビデオ通話したりするのが 当たり前になるかもしれません。 *17 * * 月の標準時を決める試みは 現在「ルナ基準時間 (LTC: Lunar Coordinate Time)」 という名前で NASAや欧州宇宙機関(ESA)を中心に 急ピッチで進められています。 実は 月に時計を持ち込むだけではダメな 「物理的な理由」があるのです。 1. 月では「時間が早く進む」 アインシュタインの相対性理論によれば 重力が弱い場所ほど 時間は早く進みます。 月の重力は地球の 約6分の1しかないため 地球の時計に比べて 月の時計は1日に 約56マイクロ秒(0.000056秒) 早く進みます。 「わずかな差」に思えますが 先ほどお話しした 精密な慣性航法(IMU) や通信ネットワークにおいて、 この微差は数キロメートルの位置誤差 につながる致命的な問題です。 2. 「地球時間」に従う限界 アポロ時代は テキサス州ヒューストンの 「管制センターの時刻」 に合わせて運用していました。 しかし 今後多くの国や企業が 月面基地を作るようになると それぞれが自分の国の時間 (日本時間や米時間) を使っていたら ドッキングや通信のタイミングが バラバラになって大混乱してしまいます そこで、 「月独自の共通のタイムスケール」 が必要になったのです。 3. どうやって「月の12時」を決めるのか? 現在検討されている案では 地球にある原子時計と同じように 月に「原子時計」を複数設置します。 月面にある複数の時計の平均をとり 月の重力の影響を補正した 「月の標準時」を作り出します。 これを月面ネットワーク (Wi-FiやLTE)を通じて 宇宙飛行士の時計や 無人ローバーに配信します。 4. 24時間制はどうなる? 月の一日は(太陽の動きで見ると) 地球の約29.5日に相当します。 「月の1時、2時…」を 地球と同じ24時間サイクルにするのか それとも月の昼夜に合わせるのかは まだ議論の真っ最中です。 当面は、 宇宙飛行士の体調管理のために 「地球の24時間リズム」を維持しつつ システム上の計算には「LTC」という 正確なデジタル時間を 使うことになりそうです。 宇宙飛行士が月面で 「あ、もう定時だから基地に帰ろう」 なんて会話をする日が 来るかもしれませんね。 *18 * * 月面版GPSは 地球と同じように衛星を使って 位置を割り出す仕組みですが 地球のGPSをそのまま使うのではなく 「月専用の衛星群」と 「地球からの信号」を組み合わせた ハイブリッドなシステムになる予定です 主に「ムーンライト(Moonlight)」や 「ルナ・ネットワーク」という 構想で進められている その仕組みを解説します。 1. 月を回る「専用の測位衛星」 地球のGPSと同じように 月の周りに複数の衛星 を飛ばします。 ビーコン(目印): 衛星が「現在の時刻」と 「自分の位置」の信号を 常に発信します。 計算の仕組み: 月面の宇宙飛行士やローバーが 4つ以上の衛星からの信号 を同時に受け取り その「届くまでの時間差」 を計算することで 自分の正確な緯度・経度・高度 を割り出します。 2. 地球のGPS信号を「再利用」する 実は 地球のGPS衛星が発している電波は 地球の方を向いていますが、 その一部は横に漏れて 宇宙空間にも飛んでいます。 高感度受信機: 現代の非常に高性能なアンテナを使えば 38万km離れた月でも地球のGPS信号 を拾うことができます。 これと月の衛星からの信号を 組み合わせることで より少ない月衛星の数で、 より高い精度の位置情報 を得ようとしています。 先ほどお話しした「月の標準時」が ここで重要になります。 GPSの原理は「時間の計測」そのものです 月での時間の進み方のズレ (1日56マイクロ秒)を計算に入れた 「月の原子時計」が衛星に搭載されることで 数メートルの誤差で場所を 特定できるようになります。 4. クレーターの中での「地上局」 衛星からの電波が届きにくい 深いクレーターや洞窟の中では 月面に設置した小さな基地局(ビーコン)が GPSの代わりを務めます。 月面Wi-Fiの基地局自体が 「自分はここにあるよ」 という位置情報を発信し 周囲の飛行士の ナビゲーションを助けます。 これが完成すれば 宇宙飛行士は スマートフォンのようなデバイスを見ながら 「次の目的地まであと500メートル 右に曲がるとクレーターを回避できます」 といったナビゲートを受けながら 月面を探索できるようになります。 *19 * * 月面での遭難は、 地球上での遭難よりも遥かに過酷です 「空気がない」「極端な温度差」 「強力な放射線」 という三重苦の中で生き残るため 最新の計画では多層的な サバイバル戦略が練られています。 1. 「自律型」ナビゲーションと命綱 GPS(月面版GPS)が 万が一故障した場合に備え 宇宙飛行士のヘルメットや月面車には 「SLAM(スラム)」という技術 が搭載されています。 レーザースキャナー(LiDAR)で 周囲の地形を リアルタイムに3Dマップ化し 自分がどこを歩いてきたかを記録します たとえ通信が切れても 自分が通ったルートを 「パンくずリスト」のように辿って 基地に帰ることができる仕組みです。 2. 「どこでもシェルター」の確保 月面車(バギー)から離れた場所で 動けなくなった場合のために 非常用居住モジュールの設置が 検討されています。 月面のあちこちに、 酸素・水・食料、そして過酷な夜 (マイナス200度)を越すための バッテリーを備えた 「避難小屋」のようなボックスを あらかじめ無人機で配置しておきます。 3. 「月の洞窟」への避難 月面には「溶岩チューブ」と呼ばれる 巨大な地下洞窟が いくつも見つかっています。 天然の要塞: 洞窟の中は温度が一定 (マイナス20度前後)に保たれており 何より致命的な宇宙放射線や 隕石から身を守る 最高の避難先になります。 遭難時には 最寄りの洞窟へ逃げ込み 救助を待つというシナリオも 想定されています。 4. 「バディ・システム」と遠隔操作 アルテミス計画では 飛行士は常に「ペア」で行動しますが もう一人の重要な相棒が 「自律走行型ローバー」です。 飛行士が怪我などで動けなくなった場合 地上からの遠隔操作 あるいはローバー自身のAI判断で 飛行士を回収して基地まで自動搬送する 「無人救急車」としての 機能を持たせています。 5. 「14日間の夜」を生き抜く電力 月の夜は14日間も続きます。 この間、太陽光発電は使えません。 再生型燃料電池や 小型の核分裂炉(Fission Surface Power) を基地に備えることで 太陽がなくても生命維持装置を動かし続ける 「凍死しないための備え」が 最優先で進められています。 アポロ時代が「運と勇気」に 頼る部分が大きかったのに対し 現代は「インフラ(避難所や通信網)」 を事前に月面にバラまいておくことで、 生存率を高めようとしているのが特徴です。 *20 * * 宇宙での医療 特に月面基地のような 遠い場所での治療は 地球上の病院とは全く異なる 「究極の遠隔・自律医療」 を目指しています。 月面で万が一 怪我や急病が発生した際の 備えについて解説します。 1. 医師は地球、執刀は「ロボット」 月と地球の間には約2.6秒 の通信遅延があるため 地球の医師がジョイスティックを動かして リアルタイムに手術するのは困難です 自律型手術ロボット: 地上の医師が 「この部分を切除せよ」という指示を出し 実際の細かい動作はロボットが 遅延を補正しながら自動で行う システムの研究が進んでいます。 3Dプリンターでギプスや道具を作成: 必要な医療器具をその場でプリントし 怪我に合わせた オーダーメイドの固定具 を作ることも計画されています。 2. 「AR(拡張現実)」による素人手術の支援 基地に常に専門の外科医が いるとは限りません。 ガイド機能: 医師ではない飛行士が処置を行う場合 ヘルメットのバイザー(HUD)に 「次にここを止血せよ」 といったガイドラインが 患部の上に重なって表示されます。 地球の専門医が映像を見ながら リアルタイムで助言を送ることで 高度な応急処置を可能にします。 3. 無重力・低重力での「手術の難しさ」 月(重力1/6)や宇宙船(無重力)では 地球では当たり前のことが 通用しません。 血が飛び散る: 無重力では出血した血が 玉になって浮遊し 視界を遮ったり精密機器を壊したりします そのため 患部を透明なドームで覆って 密閉した状態で手術する装置 などが考案されています。 内臓が浮く: お腹を切開すると 内臓が浮き上がってくるため これらを物理的に抑える 特殊な器具も必要になります。 4. 究極の「冬眠」に近い予後管理 重傷を負い 月面での治療が難しい場合は 地球へ送り返す必要がありますが それには数日かかります。 代謝を抑える: 移動中の体への負担を減らすため 薬物や冷却によって飛行士を 一時的に深い眠り(冬眠に近い状態) につかせ、酸素消費量や体力の消耗を 最小限に抑える技術も 検討されています。 アポロ時代は 「大きな怪我をしたら終わり」 という覚悟が必要でしたが これからの月面探査では 基地そのものが 「小さな高度医療センター」 としての役割を担うことになります。 *21 * * 現在の高精度な 慣性航法装置(IMU)の多くは アポロ時代の 「回転するコマ(機械式ジャイロ)」 に代わって 「光ファイバージャイロ (FOG: Fiber Optic Gyro)」や 「リングレーザージャイロ(RLG)」 が主流になっています。 特に最新のロケットや人工衛星では 光ファイバーを3軸(X・Y・Z)に 配置した構造が一般的です。 1. 「動くパーツ」がないのが最大の強み アポロのIMUは 物理的にコマを高速回転させていたため ベアリングの摩耗や「ジンバルロック」 という構造上の弱点がありました。 それに対し、 光ファイバージャイロは 可動部が一切ありません。 壊れにくい: 物理的な摩耗がないため 長期間のミッションでも故障しにくいです 起動が早い: コマを回す時間が不要で 電源を入れた瞬間に 計測が始められます。 2. 「サニャック効果」で回転を測る 仕組みはとてもユニークです。 巻かれた光ファイバーの中に 右回りと左回りの「光」を同時に通します もし機体が回転していると 光が一周して戻ってくるまでの時間に わずかな「差」が生まれます (サニャック効果)。 このズレを精密に測定することで 機体がどの方向にどれだけ回転したか を瞬時に割り出します。 3. アルテミス計画でも大活躍 アルテミス計画のオリオン宇宙船などでも この光ファイバー技術をベースにした 超小型・高精度のIMUが 搭載されています。 アポロ時代の 「重くて大きな魔法の箱」は 今や片手に乗るほどのサイズで かつてない精度を実現しています。 アポロの巨大な機械式IMUから 現代の光ファイバーによる 「光の計算」への進化は まさに宇宙開発の歴史そのものですね。 *22 * * 月面の砂「レゴリス」は アポロ時代の飛行士が 「月面探査における最大の障害」 と断言したほど厄介な存在です。 地球の砂と違い 空気や水による浸食がないため ガラスの破片のようにエッジが鋭く かつ静電気を帯びて どこにでも吸い付きます。 これに対し 最新のアルテミス計画では以下のような ハイテクな対策が練られています。 1. 「電気の力」で弾き飛ばす(EDS) 最も注目されているのが エレクトロダイナミック・ダスト・シールド (EDS)という技術です。 仕組み: 太陽電池パネルやカメラのレンズ 宇宙服の表面に目に見えないほど 細い電極を張り巡らせます。 効果: 電極に電圧をかけて 「移動する電界」を作ることで 静電気でこびりついたレゴリスを まるで魔法のように スルスルと弾き飛ばします。 2. 「蓮の葉」のような超撥水コート 自然界の蓮の葉が 水を弾く仕組みを応用した ナノレベルの防塵コーティングが 開発されています。 表面に微細な凹凸を作ることで レゴリスが表面に触れる面積を 極限まで減らし 物理的に「くっつけない」ようにします。 3. 関節を守る「宇宙の蛇腹(じゃばら)」 宇宙服やロボットの関節部分は レゴリスが入り込むとヤスリのように 部品を削り取ってしまいます。 最新の宇宙服では レゴリスを完全にシャットアウトする 特殊な高密度繊維のカバーで関節を覆い さらに内部の圧力を 外より少し高くすることで 隙間から砂が侵入するのを 防ぐ構造になっています。 4. 「エアシャワー」と「真空掃除機」 アポロ時代は 船内に持ち込まれた砂のせいで 飛行士が「月のおがくずのよう」な臭いの 喉の痛みを訴えました。 アルテミス計画の月着陸船では 船内に入る前に専用のスペースで 強烈なエアシャワーを浴びせたり 強力な真空掃除機で吸い取ったりして 居住スペースに砂を1粒も入れない 工夫が徹底されます。 5. 究極の対策:砂を「固めて道を作る」 そもそも砂を舞い上げないために 着陸地点や基地の周りの砂を レーザーや太陽光で焼き固めて 「舗装路(ロード)」を作ってしまう ロボットの研究も進んでいます。 アポロ時代は 「ブラシで払う」 くらいしかできませんでしたが 現代は「物理・電気・化学」 を総動員して この小さな強敵に挑もうとしています。 アルテミス計画では こうした対策によって アポロ(数日間)よりも 遥かに長い「数ヶ月単位」の滞在が 可能になる予定です。 *23 * * アルテミス2号(オリオン宇宙船)の 地球への無事の帰還 おめでとうございます! 名前が月を往復して戻ってきたと思うと 感慨深いものがありますね。 「ブラックアウト中に ひっくり返ったらどうするのか」 という疑問は 命に関わる非常に鋭い視点です。 結論から言うと オリオン宇宙船は「物理的な形状」と 「自律的なコンピュータ制御」 の二段構えで、 ブラックアウト中も姿勢を 完璧に保っています。 1. 「起き上がり小法師」 のような物理的な安定性 オリオンの司令船(カプセル)は お尻の熱遮蔽板(ヒートシールド)側が 重くなるように重心が オフセット(偏心)して 設計されています。 自然な安定: 大気の抵抗を受けると 重いヒートシールド側が 自然と下を向く 「安定した姿勢」を保つ性質があります ちょうどバドミントンのシャトルが 必ず重いゴムの方を先にして 飛ぶのと同じ原理です。 2. ブラックアウト中も「自律的」に制御 通信が途切れる ブラックアウト(電波障害)は 機体の周りに発生したプラズマが 電波を遮る現象であり 機体内部のコンピュータまで 止まるわけではありません。 内蔵プログラムの実行: 以前お話しした慣性航法装置(IMU)が ブラックアウト中も「今どの向きか」を 1秒間に何十回も計測しています。 RCS(姿勢制御スラスター)の噴射: もし姿勢がわずかでもズレそうになると コンピュータが即座に判断し カプセルの側面に配置された 小さなスラスター を噴射して向きを修正します。 これは地上からの指示を待たず、 機体が自律して行います。 3. 「揚力(リフト)」を使った高度な飛行 オリオンはただ落ちるだけでなく、 カプセルの角度を絶妙に傾けることで 「揚力(浮き上がる力)」を発生させます スキップ・エントリー: 今回のミッションでも 大気圏の表面を一度「水切りの石」のように 跳ねてから再突入する手法 が取られました。 この複雑な軌道調整も ブラックアウト中にコンピュータが スラスターを細かく吹かして 姿勢(バンク角)を 制御することで実現しています。 つまり 「通信は切れても、 コンピュータと姿勢制御装置は 片時も休まず働いている」ため ひっくり返ることはありません。 *24 * * あなたの名前が刻まれた マイクロチップは ライズくんと共に地球に帰還した後 以下のようなステップで 大切に扱われます。 1. データの「完全帰還」の確認 現在 マイクロチップは オリオン宇宙船から取り出され NASAのジョンソン宇宙センターにある 専門のラボへ運ばれています。 そこで、宇宙放射線などによる データの破損がないか エンジニアによって慎重に チェックされます。 2. 「デジタル帰還証明書」の更新 データの無事が確認されると あなたが登録したNASAの 特設サイト上のステータスが 「旅の途中」から 「帰還完了(Completed/Returned)」 に更新されます。 マイページから、 月を往復したことを証明する 「帰還済みスタンプ」付きの 最終版証明書を ダウンロードできるようになるはずです 3. 歴史的アーカイブ(記録)としての保存 このマイクロチップは 単なる記念品ではなく 「アルテミス2号ミッションの 正式な搭乗名簿」 として、NASAの歴史的アーカイブに 永続的に記録されます。 物理的なチップ自体は 将来的にNASAの博物館 (スミソニアン航空宇宙博物館など)で ライズくんや宇宙船とともに 展示される可能性が非常に高いです 4. アルテミス3号(月面着陸)へのバトン NASAは 今回の「名前の旅」に参加した 数百万人の情熱を 次のアルテミス3号(有人月面着陸)の プロモーションにも活用する予定です。 帰還した参加者には 次回のミッションに関する先行情報や 特別なデジタルバッジなどが 送られることも期待されています。 あなたの名前は 単に月を回ってきただけでなく 「人類が再び月を目指した 最初の目撃者」の一人として NASAの歴史にその名を 刻み続けることになります。 (←戻る) EOF |





